施設管理関係(証明、設備、バリアフリー、危険防止)

施設管理関係(証明、設備、バリアフリー、危険防止)

Q&A

ホテル・旅館、温泉施設の建築をご検討中の方には、さまざまな疑問や不安があるのではないでしょうか。ここでは、当事務所にご相談が寄せられたよくあるご質問を紹介し、Q&A形式で回答します。

通行・避難のためだけではない階段

フォトアングルを意識した階段

階段は、インテリアとして重要な要素になります。
ホテルではブライダルの写真撮影に使われることがあるため、フォトアングルを意識したデザインが求められる場合があります。
ヒントとサンプル

①写真撮影もできる、立体的な空間構成の階段(図1)
②美しくのびるドレスにふさわしい、優美な曲線の階段(図2)

図1
図2

浴場のバリアフリー

誰もが使える浴場の気配り

旅館・ホテルの浴場は、誰もが安全に、安心してお風呂を楽しめるように、様々な気配りのデザインが必要です。
ヒントとサンプル

①各浴槽の縁及び通路、段差のある所には、必ず手摺を設ける。(図1)
②手摺の構造は、支柱・下地はステンレス製とし、手摺部分は桧などの木にすると良いでしょう。(図1)
③脱衣室玄関には、段差がある場合はスロープを併設する。(図2)

図1
図2

客室のバリアフリー②

みんなが部屋で快適に楽しく過ごせる工夫②:廊下

客室内で長い廊下をとる場合、年配の方や身障者の方は移動が大変になってしまうため、補助の手すりを設けると良いでしょう。

ヒントとサンプル

①部屋の雰囲気になじむように、木の手すりとしました。(図1)
②持ちやすいように板を傾け、小口を甲丸面にするなど、手にやさしいデザインにしました。(図2)

図1
図2

客室のバリアフリー①

みんなが部屋で快適に楽しく過ごせる工夫①:踏込

和室タイプの客室では、踏込に段差があることが多く、高齢者等にとって支障になりやすいです。

ヒントとサンプル

①踏込のスペースに余裕がある場合は、上り框の横にスロープを併設すると良いでしょう。(図1)
②丸太の手すりと特徴あるフローリングの組合せによって、和室に調和しつつ、モダンなデザインになるよう工夫しました。(図2)

図1
図2

結露防止

外部に面したパイプスペースの結露に配慮

露天付き客室などのPS(パイプスペース)は外部に面した所に設けることが多いです。しかし、外気が冷え込むと、PS内の熱源のある温泉管や給湯管に、保温してあっても、PS内の空気を暖め、外気との温度差により、内壁やPSにつながった軒天井の裏側で結露し、仕上・下地を傷めることがあります。
また、RC造の場合などは躯体からの放湿も加え、密閉されているため、非常に結露しやすい状態となります。 

ヒントとサンプル

①ベントキャップやガラリなどを上下に設け、温度差換気が行えるようにすると良いでしょう。

ポイント

PSは壁に囲まれ密閉されていることから、結露が発生しやすいため、空気を流通させ、温度差を無くすことが効果的です。

LED照明の効果的な利用

LED照明の費用対効果を見極め、効果的な利用を

LED照明は、ビーム球、ダイクロハロゲン、テープライトなど、蛍光灯以外の照明器具の代用として、長寿命化、省電力化の効果が高くなります。器具がまだ割高なため、蛍光灯と比較し、費用対効果の検討が必要です。 

ヒントとサンプル

①LEDは半年でもかなり進歩するので、こまめな情報収集が必要になります。
②特に高所など球交換しにくい箇所に、長寿命のLEDは効果的です。(図4)

図1

姿見鏡のライティングテクニック

鏡に映る顔や姿を、きれいに照らすライティング

顔の正面を照らす計画をしないと、天井からの光で顔に影ができてしまいます。
ダウンライトの場合、特に注意が必要です。  

ヒントとサンプル

①鏡の裏に間接照明を仕込むと良いでしょう。(図1~図3)
②照明を顔が正対する位置に設けた例です。(図4)
③拡散型ダウンライトを使用する方法もあります。

図1
図2
図3
図4

水廻りの床の滑り防止

お風呂の床材は滑り防止に配慮

大風呂など多数が使用する水廻りの床は常に濡れ、又石鹸水等により非常に転倒の危険性の高い箇所です。使用材料も耐久性を考慮すると石やタイルを用いる例が多いですが、ポリッシャー等の毎日の清掃や人体の油脂分の浸透も加わり、長期的には次第に滑り易くなっていきます。又、防滑性を重視する程清掃しずらく、素足の歩行感にも問題が生じてしまいます。 

ヒントとサンプル

 床材料もある程度限られてきますが主な留意点としては下記の様に考えられます。

石材…ミカゲではバーナー仕上げが多いが、それでも5~10年程で滑りやすくなる例もあることから、小叩き程度とした方が防滑の耐久性では良いでしょう。
既設の床の改善策としては、塗布型の防滑加工もありますが、図1の様に物理的にノンスリップ目地を現場施工した方が確実です。
タイル…既成品から選定する場合は、必ず使用条件に適しているかを確かめましょう。
木質系…露天風呂などに多い木材の簀子は、水が表面張力で溜まった状態となるので特に滑り易いので注意が必要です。板幅はなるべく狭くするか、溝加工するなど、水が溜まりにくくすると良いでしょう。また、貼り方向も歩く方向に対して人工木材なども溝付きのタイプにし、可能なら水勾配を取るようにすると良いでしょう。

図1

段差の危険防止

小さな段差や1、2段の階段で転倒

小さな段差、1~2段の階段は、上下段の材料の色が同系色だったりすると、段差が目立ちにくく思わぬ事故につながります。

ヒントとサンプル

①上下段の材料の色を明確に変えたり、階段の先端に照明を入れたりして、お年寄りでも段差がわかるようにしましょう。(図1~2)

図1
図2

周辺状況をふまえた手すりの高さ

周辺の状況により手すりの高さが変わる

手すりの前に、椅子、テーブルがあると、その上に乗ることによって、手すりまでの距離が小さくなり、人間が、落下する危険性がある。 (図1)

ヒントとサンプル

①手すりの高さを決定するときは、周辺状況(家具の配置、施設を使用する人の年齢、使用目的)をよく確認・検討することが大切です。

図1

漏水対応の重要性

漏水の原因は発見しにくいため、放置されがちだが、早期発見により、改修費用は少なくなる

漏水を放置すると、内装の劣化、漏電事故の発生などが発生し、時間をおけばおくほど改修コストが増えていきます。漏水を発見したら、早急にその原因を究明し、対策をとりましょう。(図1) 

ヒントとサンプル

①施設管理者は、漏水に対して、日頃から目視点検を心がけ、発見した場合の建物持主への迅速な報告→原因の究明→改修方法の提案→改修工事→効果の確認 という作業スキムを整備し、漏水への対策の迅速化を図りましょう。
②防水について、施工年度と、対応年数(20年程度)により、改修計画をして、経営計画に反映させて、防水の予防保全を行うことが、望ましいです 

図1

スロープでの転倒対策

緩やかなスロープは視認性が良くないと、転倒事故の原因となる

現在では、建築物は、バリアフリー法への適合が求められ、床に段差がある場合、スロープ(斜路)の設置が義務付けられています。しかし、段差が小さく、スロープが短い場合、使用者が、それに気づかず、足をすくわれ、転倒する事故が急増しています。(図1)

 ヒントとサンプル

①スロープの前後で、仕上げの色を変えて、使用者の視認性を良くして転倒しないようにすると良いでしょう。(図2)

図1
図2

節水対策の重要性について

水・湯の出放しは、少量でもコストがかかります

たとえば、毎分5リットル 水・湯を流しっぱなしにすると、1年で2,628,000リットル およそ年間788,400円コストがかかります。 湯の場合は、燃料費もプラスされますので、コストは増大します。

ヒントとサンプル

 ①施設管理者は、日々の水・湯の使用量の増減の測定を心がけ、使用量が施設利用者数に対して、極端に増えていないかをチェックすることが望ましいです。極端な使用量の増大は、設備劣化による漏水が考えられます。

イント
湯口などは、新湯(ボイラーで沸かした、温泉・水)が出ていることが多いのでその量はランニングコストに大きな影響を及ぼします。
コストを考えながら、湯口の水量を決めましょう。(図1)
図1

バリアフリーもデザインの一部に

車イス用駐車場をアプローチの庭としてデザイン

車イス用駐車場を設ける場合で、裏口のような車イス専用の入り口から通したりせず、車イスの方も一般の方と同じようなおもてなしができるように心がけます。

ヒントとサンプル

①車イス利用者が一般の人と同じように、正面玄関から建物内へスムーズに入りやすくするため、エントランス付近に配置。(図1~3)
②風が抜ける開けた庭を通るアプローチとするために、エントランスの庭と一体的なデザインとします。(図2)

ポイント

床を石貼りとし、車イス用駐車場としての機能は損なわなようにし、尚且つ庭との一体感を持たせると良いでしょう。

図1
図2
図3

省エネルギー法について

省エネ法の改正により、指定工場等(ホテル・旅館の事業場も含まれます)には年1%のエネルギー削減努力義務が課せられることになりました。該当は、重油換算エネルギー使用量が1500kLを超える施設です。
将来的には基準の強化により、未達成企業への罰金、環境税や炭素税の導入による税負担が想定されます。
現在の重油換算エネルギー量など詳しくは経済産業省資源エネルギー庁のHPに作成支援ツールが公開されています。
当社で削減方法を検討できますので、声をおかけ下さい。

節水にはどんな方法がありますか。

節水型水栓として、手洗器の自動水栓、少量で使用感のある泡沫水栓、洗い場カランのサーモスタット式定量止水形水栓などがあります。
節水形大便器として4~4.8Lの使用水量のものが発売されています。(以前は13L~古いもので20L) 取り替えることで確かに節水となりますが、古い排水管を再使用する場合には、排水閉塞の原因となる場合もあり、器具・配管等状況を確認してから使用下さい。
給水使用箇所の各所(厨房系統・浴室カラン系統・浴槽補給系統・貯湯槽補給系統など)に給水メータを付け、極端に大きな使用箇所や、日変動が大きな箇所を確認することで、使用水量の削減可能な場所が見つかることもあります。
また管内全体の水圧を確認し、器具に支障の無い範囲で水圧を下げることも使用水量の削減に繋がります。
節水とは直接結びつきませんが、加圧給水方式を採用している建物において、大便器がフラッシュバルブ方式の場合より必要水圧が高くなるため、ポンプ動力が高くなる傾向にあります。ロータンク補給時間が気にならない箇所であれば、極力ロータンク方式を採用することで省エネとなります。

機械設備機器の点検・更新時期について

法的に必要なものとして、消防設備点検・試験、圧力容器該当品(ボイラーや、蒸気コイル付貯湯槽など)の性能検査、受水槽清掃、浄化槽点検・放流水質検査、オイルタンク漏洩検査などがあります。
その他の機械設備機器も、メンテナンスをしっかり行うことで、機器効率の維持や、機器の長寿命化が図れるため、トータル的にはコスト削減となります。しかし、新製品は次々と効率アップとコンパクト化されている為、古い機器を長く使い続けるよりも更新した方が、ランニングコストを削減でき、さらに新たな営業スペースを生む可能性もあります。下記の年数を目安に更新を計画下さい。内装工事と併せ商品力アップを図る方法がもっとも効果的です。

機器 法定耐用年数 実際耐用年数
ボイラ・冷凍機・冷温水発生機 15年 概ね20年~25~30年(方式により異なる)
空冷ヒートポンプエアコン 13年 概ね15年
ファンコイルユニット 15年 概ね20年
冷却塔 15年 15~20年
送風機 15年 15~25年(天井換気扇は10年程度)
ポンプ 10~15年 10~20年(ラインポンプは10年程度)
配管・弁類 15年 15~25年
制御機器 15年 15年

※実際の耐用年数は経験等から導かれたもので、使用勝手・水質等によっては、短い事例もあり、年数を保証するものではありません。

※耐用年数中に、機器部品の更新等が発生します。例えばボイラバーナは10年で更新が望ましいとされています。
これらに対応するため、まず施設内の機器をリスト化し、どのような設備があるか、設置年・修繕年を把握する必要があります。その上で、今後発生しうる機器点検・更新スケジュール、費用を算出し、計画的に行うとよいでしょう。

送風機・空調機の騒音が大きくなりました。

老朽化によりファンの軸ずれが起きていたり、吸込口・吹出口が埃等で閉塞しており風速・抵抗が上がっていたりと考えられます。前者はファンの更新、後者は清掃が必要です。

浴室内の結露、ガラス面の結露はどうしたらよいでしょうか?

冬季浴室内が暖かく湿度が高い状態で、外部(ガラス外側)・天井裏が冷たいと結露が発生しやすくなります。
結露対策としては、給排気設備を設けた上で、冬季は給気側に加熱コイルを設けて外気を温め、浴室内、特にガラス面に吹き付けることで結露を抑えることができます。

厨房内空調について配慮することはありますか?

昨今の温暖化の問題もあり、食中毒防止の観点から厨房給気には外気処理空調機を設置し温度調整をした空気が入るようにするべきです。ただし全量を外気処理することはランニングコスト増に繋がるため、排気フード直近にて外気と排気をショートカットさせ外気処理量を減らすなどの工夫も必要です。

また給排気のファンを、ゾーン毎・フード毎に分けて設置すること、各ファンにインバーターを設置して風量調整を行うことも省エネルギーに繋がります。

空調の効きが悪くなったが・・・? (機器老朽化は更新が必要のため除きます)

まずフィルタの汚れを確認下さい。フィルタが目詰まりすると、循環風量が確保できず、機器効率が低下します。
大浴場の脱衣室、客室などは衣類などの綿埃が多いため、空調機コイルが閉塞し機器効率を低下させる要因となっています。コイル洗浄を行い、機能の回復させてください。
夏季外気温が高い日に機器が悪い場合には、室外機周辺での排気ショートサーキットが考えられます。室外機配置を見直す、室外機に散水設備を設置するなどの対応が必要です。(空冷ヒートポンプエアコンの場合)

空調方式はどのようなものがありますか?

熱源を電気、ガス、灯油、重油にするかでいくつものシステムが考えられますが、昨今は客室単位で冷暖房が切替えられること、熱源故障時に空調停止リスクが部分的なことから、空冷ヒートポンプエアコン方式が多いようです。
また給湯需要のある宿泊施設の場合、冷温水同時取出し形ヒートポンプを採用すると冷房と同時に給湯ができ、省エネルギーを図れます。温泉熱利用、排熱利用などの検討も重要です。給湯同様、規模・運用方法等、契約電力量、平日と休日での稼働率の変化、イニシャルコスト、CO2排出量など決定するにはいくつかの要因があります。

消防用設備とは何ですか、どのようなものがありますか?

消防用設備等には、①消防の用に供する設備(施設内の方が使用する・利用する設備)②消防用水③消火活動上必要な設備(消防隊等が使用する設備)などの項目に分かれた設備があります。

①消防の用に供する設備は更に(1)消火設備(火災が発生した場合に消火の目的で用いる設備)(2)警報設備(火災を早期発見したり、消防機関へ通報する設備など)(3)避難設備(火災時に安全に非難・誘導する設備)という項目に分かれています。

設置しなければならない設備は、用途面積などによって法律で決まっており、不特定多数が利用する施設・高層階や地階等避難に時間がかかる施設ほど、より安全性が高い設備が求められています。
(1)消火設備の具体的なものとして、施設利用者が自ら消火活動を行う「屋内消火栓設備」、火災が発生すると熱などを感知し自動で消火を行う「スプリンクラー設備」、ボイラ室や電気室等の火災に対して危険度の高い施設を対象とした「不活性ガス消火設備」などがあります。
消火設備は一般的に緊急度が高いため、配管内を常に充水しておく必要がありますが、寒冷地の場合凍結の恐れもあり、所轄消防と打合せにより、乾式(充水しない)とするなどの対応が必要です。

また消防設備は法定点検が必要となり、所轄消防へ報告が必要です。点検に応じてメンテナンスも必要となります。

温泉掛流しの浴槽を設置したいです。

温泉量が豊富で、温泉温度が適度に高い(浴槽温度以上)場合は、浴槽循環ろ過設備等を設けずに、温泉掛流しとする方がイニシャルコストや営業ツール上メリットがあります。ただし温泉量が少ない場合や温度が低い場合は、ランニングコストがかかるため注意下さい。

浴槽へ供給する温泉量は、浴槽からの放熱量を温泉熱(温泉温度と浴槽温度の差)で賄える量、入浴者や周囲から入る汚れを温泉補給によって流しだせる量の2点を満たす必要があります。室内浴槽の場合、放熱量が少ないため熱からみた温泉量は少なくて済むのですが、少ない事で浴槽の汚れが取りきれないといったことにもなりかねないため注意が必要です。
温泉温度は季節によって変化しやすいものです。また浴槽放熱量は天気、外気温、風速によって刻一刻と変化していきます。浴槽温度を一定に保つには、これらに対応して浴槽への温泉供給量や温泉温度を変えなくてはなりません。手動で行うことはかなりの経験が必要となりますので、掛流し浴槽を設置した場合、1年間は供給量と温泉温度、天気、外気温との関係を記録し、様子を見ることが望まれます。

また自動で温泉量を変化させる、自動で加水するといった設備を設けることも有効です。(温泉量を変化させる場合、一般的に自動弁を用いますが温泉成分によっては直ぐに腐食するので注意が必要です。また自動で加水をする場合、広告媒体によっては「源泉掛け流し」と表現できない場合もあります。)
客室浴室などの小さい浴槽の場合には、手動加水栓・湯揉み板を設置し、お客様に好みに合わせて温度調節してもらう方法もあります。

水は熱いと上方に溜まり、冷めると沈殿する性質があります。浴槽の上下で温度差を作らないためには、浴槽下方からオーバーフロー配管を一旦水位レベルまで立上げてから開放し、浴槽下方の水からオーバーしていく構造とする必要があります。
(循環ポンプを設ける方法も有効ですが、保健所によっては薬液注入装置の設置を指導されたり、広告媒体によっては「源泉掛け流し」と表現できない場合もあります。)

温泉設備で気を付けなくてはならないことがありますか?

2007年の温泉施設爆発事故を受け、温泉法が改正になりました。温泉に可燃性ガスが含まれているかどうか調べ届出が必要になります。また含まれている場合には、ガス分離装置を設置すること、周辺の立ち入り禁止や火気使用禁止の措置等が必要となります。
温泉成分によっては、スケールが発生しやすいもの、金属等を腐食させやすいものなどがあります。
代表的な成分では、カルシウムイオン、鉄イオン、塩素イオン、硫酸イオンなどの項目をみるとよいでしょう。
また成分にヒ素等が含まれていると、排水処理設備を設置しなければならない場合もありますので、排水放流先との打合せも必要となります。(排水の項、水質汚濁防止法とも関係します。)
温泉を貯留する場合については、前項を確認下さい。

浴槽循環ろ過設備とは何ですか?

温泉使用量に制約があり、浴槽の清浄度が保てない場合に設置される設備で、浴槽水の垢・髪の毛・ゴミをろ過し、再び浴槽に戻す設備です。
砂ろ過式、珪藻土ろ過式、カートリッジ式などの方式がありますが、一般的には砂ろ過をお勧めします。取扱いが簡単な自動逆洗機能付のもが良いでしょう。法改正があり逆洗浄ができる構造が必要となり、カートリッジ式は好ましくありません。
その他法改正のポイントとして下記のようなものがあります。

  1. 薬注配管はろ過器流入側へ接続する。
    古いろ過装置の場合、出口側に接続されているものがあります。改善が必要です。
  2. 浴槽水残留塩素濃度は0.2~0.4ppmに保ち、濃度を記録・3年間保管する。
    残留塩素濃度を一定に保つためにも、自動残留塩素濃度計測装置、及び薬液注入ポンプの導入が望まれます。
    データロガーに自動保存できるものもあります。
  3. 浴槽水は水面下に供給する。(各保健所によっては見解が異なります。)
    これまで湯量を豊富に見せるため、ろ過循環水を湯口から供給する方法が多く取られてきました。飛沫水が発生するため、レジオネラ属菌対策として改善が必要となりました。循環配管を改修するためには大規模な工事が必要となりますので、建築意匠的投資を含めて検討ください。
  4. 温泉を貯留する場合は60℃以上とするか、薬注装置を設置する。
    これもレジオネラ属菌対策として必要となりました。
    ただし浴槽へ供給する温度として60℃は高めであること、元の温泉温度が低い場合60℃に貯留するのはランニングコスト増となることなどを考慮して、対応を考えるとよいでしょう。

便器から臭いがします。

使用していない器具・排水目皿があると、内部の排水トラップの封水が乾いてしまい、排水管内の臭気が上がってきている可能性があります。定期的に水を補給をするとよいでしょう。
また使用頻度の高い小便器などは、尿石が溜まって臭いの原因になることもあります。細かな清掃や、器具更新も検討下さい。

排水で単独処理浄化槽を使用しています。

現在の法律では、汚水と雑排水を処理できる合併式浄化槽を設置なくてはなりません。諸官庁と相談の上更新が望まれます。更新の際には、できるだけ動力の少ない浄化システムを採用するとよいでしょう。地域により放流水質の基準がことなるので、合わせて確認が必要です。

排水関係の法律はありますか。

全国的法律として水質汚濁防止法というものがあります。対象となる業種が一覧になっているのですが、旅館業の厨房施設や入浴施設、洗濯施設が該当しています。
上記施設の設置にあたっては、着工前に諸官庁へ届出が必要となります。また一定の排水水質を守る必要があります。温泉を使用している場合には、フッ素やホウ素、ヒ素等の成分も対象となるため注意が必要です。
また地域により上位法があり、例えば「瀬戸内海環境保全特別措置法」などもありますので、諸官庁へ問い合わせ下さい。

排熱回収ヒートポンプとはなんですか。導入するとメリットがありますか?

主に深夜電力の安い価格の電気を利用して浴槽の排温水などから熱を取り、夜間お湯を貯めておくヒートポンプ式加熱装置です。空気よりも排温水の方が温度が一定のため、エコキュートよりも効率の高い機器が多いです。
導入にあたっては、エコキュートで述べた貯湯容量に加え、排温水源を何にするか(一般的に浴槽のオーバーフロー等)、排温水回収槽を作れるか、などの検討も必要になります。また排温水の種類によっては、スケール分・石鹸カス・垢・髪の毛等が溜まりやすいため、定期的な回収槽の清掃が必要になりコストもかかるため、ランニングコスト算出時確認下さい。

エコキュートとはなんですか。導入するとメリットがありますか?

主に深夜電力の安い価格の電気を利用して空気より熱を取り、夜間お湯を貯めておくヒートポンプ式加熱装置です。深夜電力のため灯油や重油に比べランニングが安くなります。ホテル旅館といった施設の場合、夜間もお風呂・食器洗浄等の給湯使用が考えられますので、一日の使用湯量の何割を夜間貯めておくか、夜間貯めきれない分を昼間どのように補うかが大切です。週末と平日で給湯使用量に差がある場合には、合わせて配慮が必要です。
熱源はボイラに比べて大きくなる傾向にあり、夜間貯めておくため貯湯槽の容量も大きくなりスペースをとります。
ボイラシステムと比べると、イニシャルコストも高くなる傾向にあるため、投資回収年の確認が必要です。

給湯でボイラを使用しています。ランニングコスト低減にはどうしたらよいですか?

現在のボイラの運転状況を確認下さい。着火・停止を繰り返している場合には、ボイラ能力に余裕があると思われます。統合しボイラの定格能力で運転できる方式が望まれます。
またガス熱源の場合潜熱回収型比例制御方式のボイラが広がっております。ボイラ効率がよくなるためランニングコスト削減となります。その他、ベース負荷を電気ヒートポンプ式で給湯し、ピーク負荷を油やガスのボイラで給湯するなど、効率のよいシステムを組合せコスト削減ができることがあります。

給湯方式はどのようなものがありますか?

熱源を電気、ガス、灯油、重油にするかでいくつものシステムが考えられます。規模・運用方法等、契約電力量、平日と休日での稼働率の変化、給湯以外での熱需要、イニシャルコスト、CO2排出量など決定するにはいくつかの要因があります。
温泉熱利用、排熱利用など省エネルギー対策検討も重要です。
規模によって中央熱源のセントラル給湯方式、給湯必要箇所毎にガス給湯器などを設置する局所給湯方式があります。

給水配管材にはどんなものがありますか? 既設の更新の場合どんな配管材がよいですか?

配管用ステンレス鋼管(SUS)、銅管、塩化ビニルライニング鋼管(VA)、耐衝撃性硬質塩化ビニル配管(HIVP)、架橋ポリエチレン管(PEX)などがあります。
費用的にはHIVPが安価となりますが、耐震性を考慮すると主管は金属管が望まれます。金属管でも軽量性や継手方式で状況に応じた選択がなされますが、それぞれにライニング鋼管では継手部コア破損による腐食、銅管には管内流速による潰食、ステンレス管には継手パッキンの老朽化といった問題もあり、市水の水質などを考慮して選定する必要があります。
また浴室洗い場カラン周り配管などは、腐食の恐れのない樹脂配管(HIVPやPEX)が適しています。

給水方式はどのようなものがありますか?

宿泊施設の場合、市水を一度受水槽に貯留したのち、加圧給水ポンプで圧力給水する方法と、揚水ポンプで高架水槽へ揚水し、重力給水する方法が一般的です。停電時でも給水できることや、高架水槽の建築構造への負担等を考慮し決定します。
井戸などがあれば、水質に応じて飲用・雑用水・浴槽水として使用することができ、ランニングコスト軽減につながります。
増築を繰り返した建物の場合、棟毎に揚水ポンプ・高架水槽が設置されている場合があります。水槽は年1回の清掃が義務づけられており清掃コストが、またポンプメンテナンスコストがかかるため、統合されることが望まれます。

停電中に火災があった場合、自火報受信機等の消防機器は稼動しますか?

自火報などの消防設備には予備電源や非常電源により停電時のバックアップがされています。停電時における監視時間は、消防法等で定められています。自火報受信機で60分です。
監視時間を越えて蓄電池が放電すると電圧低下が生じ受信機の機能が停止します。蓄電池の劣化により監視時間が著しく低下している場合がありますので注意が必要です。
停電状態が通電状態に戻ると自動的に電源が入り、蓄電池放電後の満充電には二日程度の時間がかかります。

自販機の消費電力はどれくらいですか

一般的には自動販売機消費電力は、モーター500w 蛍光灯30wx4本で合計650w程度となります。
また、電気料金は、蛍光灯点灯時間 12時間 モーター稼働率 50%(12時間)とし電気料金単価21円とすると消費電力(500+120W)x24時間x30日x稼働率50%÷1000=223.2kwとなります。
よって一ヶ月の電気料金は223.2kwx電気料金単価21円=4,687円となります。

蛍光灯が頻繁に切れてしまいます。

蛍光灯は客室のトイレ等の頻繁に入り切りする場所では、寿命を縮めますので不向きです。長時間つけるような箇所に設置しましょう。

客室で待機電力が高いものは何ですか?

  1. 電気ポット 44w程度(保温状態)
  2. 電気温水式ウォシュレット22w~32w
  3. ガス湯沸器リモコン 2w~(古いもので10w)(リモコン信号の監視状態です)
  4. DVD・テレビ 0.5w~1w

客室における電気機器の省エネについてはどのような方法がありますか?

一般的にはご家庭で使用する電気製品と同じで主に下記の電気製品が挙げられます。
①電気ポット
②冷蔵庫
③暖房便座
④照明器具(白熱灯)

省エネ方法としては、
①電気ポットのお湯は必要最小限の量をとする。(沸かし時間の短縮)
②空の冷蔵庫は手元にスイッチを設置しておき使用時にスイッチを入れる。(常時使用を避ける)
③暖房便座はチェックイン時に電源をいれることとしそれ以外「切」にしておく。
④照明器具は蛍光灯かLEDタイプのものを使用する。
また、チェックアウト後の客室の電源管理として照明・コンセント負荷を一括遮断する消灯用のスイッチを設けることもお勧めします。ただし、冷蔵庫や掃除用のコンセントは除きます。

PCB使用の電気機器が、使用から保管になった時の注意点は?

変圧器・コンデンサなど、使用済みのPCB使用電気機器は、産業廃棄物となります。したがって、事業者は、その産業廃棄物の回収システムが確立されるまで、厚生省令で定める技術上の基準に従い、生活環境に支障がないよう保管しなければなりません。具体的には次のようになります。
①保管施設または保管容器により保管を行い、同廃棄物の飛散、流出、地下への浸透および悪臭の発散の恐れがないようにする。
②保管施設には、ねずみ、蚊、はえ等.どの害虫が発生しないようにする。

VODシステムとは何でしょうか?

VODとはビデオオンデマンドの略で、好きなときに好きな映像を楽しめるシステムです。好きな映画や番組をいつでも、いくつでも、何度でも楽しんでいただけるのが特徴です。
特にビジネスホテルでの採用が多いようです。また、ホテルオリジナルのインフォメーションページを作成することもでき、イベント情報、お得な情報、館内案内や周辺地域のお楽しみスポット情報ガイドなどで、お客様の利便性とホテルイメージのアップにつなげることができます

電気基本料金を下げるためにはどのようにしたら良いでしょうか?

電気料金の基本料金には、過去1年間の最大需要電力(デマンド値)で大きく変わります。
以降一年間の電気料金に大きく影響することになります。つまり、電気料金の削減には、デマンド値を抑えて契約電力を下げることが有効になります。デマンド値を抑制するには、デマンド監視装置を設置して、常に電気の使用状況を管理することが有効です。

震災後、節電が騒がれている中で電化厨房の割引は継続されるのでしょうか?

火災に対する安全性、衛生面での環境改善には電化厨房の導入は最善のように思われます。しかし、節電が騒がれているなかで、電化厨房を採用することに抵抗があるかもしれませんが、電力回復後については検討する余地がありそうです。
現在のところ、電化厨房の導入割引制度は、現状と変わりありません。今後、供給規定の変更が行われる可能性がありますので、電化厨房の導入に際しては最寄りの電力会社と協議が必要です。

業務用電化厨房契約はどれくらいの電気料金が削減されますか?

割引対象となる厨房機器の電力使用量に3円(電力会社により異なります)を乗じた金額が割引額となります。

LED照明器具の設置について注意点はありますか。

最近は省エネに伴い、LED照明器具が普及しています。LED照明器具の特徴として以下の点を参考にご検討ください。
①LED照明は、白熱電球や蛍光灯に比べランプ特性の違いから暗く感じられます。室内で同程度の照度を確保する場合、灯具を追加をしなければならない場合があります。また、同じ電球色でも色目が若干異なりますので採用の際には、実際に設置してみて事前に目視による確認が必要です。
②市販のLED電球を交換するにあたり注意しなければならない事は口金です。E26・E17の口金であればそのまま交換できます。ただし、電球の差込方法が横向きのものは使用できない場合があります。また、非常用照明やHIDランプ器具には使用できません。
③事務所内でよく採用されている蛍光灯器具のランプ交換用として直管型のLED電球が販売されています。
直管型のLED電球は、そのまま既存のランプを交換するのではなく、蛍光灯安定器の取り外し、配線接続等、専門の電気工事業者でなければ交換できません。さらに40w蛍光灯と比べると40%程度の消費電力の削減がありますが、40w相当のHF蛍光灯と比べるとあまり大差がありません。
④浴場の場合で注意しなければならないのは温泉成分です。LED照明器具は一般の家電製品と同じで硫化水素に弱い機器です。著しく寿命が短縮されます。
⑤既存の照明器具を交換する場合、調光器具、調光回路は、調光スイッチの交換や調光盤の改造が必要になります。

耐震補強を進める上で、その他に注意する事項がありますか?

電気や空調、衛生などの「設備」、仕上げ材などの建築2次部材への対策も考慮することが必要となります。建物を使用する上で必要な「機能」も考慮することが必要となります。

補強が必要になった場合どのような方法がありますか?

一般的には「耐震」「制震」「免震」の方法があります。
「耐震」による補強は、建物の粘りや強さを補強し、大地震時に建物が損傷しても人命の安全を確保することを目標とします。

  • 柱の補強方法・・・鉄板巻、炭素繊維巻補強
  • 壁の補強方法・・・耐震スリットの設置、耐力壁の増設、ブレース壁の増設
  • その他・・・バットレス、骨組みの増設、重量低減(防水保護コンクリートの撤去、最上階の解体等)

※特に壁の補強については、空間に制約がでる場合が多く、施設の性格も含めて総合的に判断をする必要があります。
「制震」や「免震」による補強は「耐震」より高い耐震性能を要する場合に採用します。「耐震」よりコスト高になることが予想されます。
施工業者によっては、大臣認定等を取得している、独自の工法を持っている場合があります。

どのような建物の場合、耐震補強が必要になると想定されますか?

一概には判断しかねるが、以下の場合耐力や靭性(ねばり-変形能力)が不足していると考えられます。

  • 柱、梁の断面が小さい
  • 柱のスパン(距離)が長い
  • 梁の本数が少ない
  • 耐力壁が少ない
  • 下階に吹き抜けやピロティがある
  • はね出し部分の長さが長い
  • ELVシャフトや階段室の位置が偏っている

耐震診断について具体的にはどのように進めるのですか?

事前に、図面、計算書等の確認をします。現地調査にて、経年劣化(亀裂、腐食等)の現状の状態をチェックします。

  • 外観劣化及び設計図と現況の照合
  • コンクリート強度調査
  • 中性化試験

その後、以下の内容で数値として耐震性能を計算します。
1次診断・・・柱・壁の断面積、により建物の耐力を略算し耐震性能を計算します
2次診断・・・柱・壁の断面積、配筋量より部材ごとの耐力を 計算し耐震性能を計算します
3次診断・・・柱・梁・壁の断面積・配筋量より部材ごとの耐力を計算し建物全体の崩壊状態を推定し耐震性能を計算します。
一般的には、2次診断まで行い耐震性を評価していることが多いようです。特殊な建物で2次診断で判断が困難なものについては、3次診断まで行います。

耐震診断の進め方はどのようになりますか?

一般的には以下になります。

  1. 「耐震予備診断」・・・「耐震診断」の必要性とその緊急度を評価
  2. 「耐震診断」・・・設計図書と現地調査によって建物の強度を調べ、建物の耐震性能を評価
  3. 「補強計画」・・・補強が必要となった場合には設計、予算算出等を行う

方向性について具体的な検討を進める
場合によっては、建て替え等の判断にいたる場合もある

建物の耐震性能(Is)による安全性の判定とはどのような内容ですか?

1981年以前の旧基準の建物は、設計法が現在と異なるため、現在と同様な方法で耐震性の検討を行うことができません。このため、耐震診断では建物の強度や粘りに加え、その形状や経年状況を考慮した耐震指標:Is値を計算します。Is値と大地震の被害を比較すると下記の様なことがいえます。

  • Is値が大きくなると、被災度は小さくなる傾向が見らます。
  • Is値が0.6を上回れば被害は、概ね小破以下となっています。
  • Is値が0.4から0.6の建物では多くの建物に中破以上の被害が生じています。
  • Is値が0.4以下の建物の多くは倒壊または大破しています。

既存の建物に対する耐震改修の法律はありますか?

「建築物の耐震改修の促進に関する法律」という建物を評価する方法があります。
耐震診断とは、上記の地震に対し建物の崩壊する状態を予想しその時の耐力と変形量で建物の耐震性能(Is)を算出し安全性を判定する方法です。

過去の法律、基準で設計された建物はどうなるのでしょうか?

法律が後から変わっていますので、違法(法律違反)ではなく、「既存不適格」扱いとなります。
特に「特定建築物」につきましては、現行の法律に対し適合させるよう改修に努めなければなりません。

日本の建物耐震の基準はどのような内容ですか?

日本の耐震基準の変遷を下記に記述します。
構造設計は自然に起こったことを解析し、数値的に置き換えて発達してきた工学です。
今後も地震の被害、解析技術の発達により変遷して行くことになると思われます。

照明器具の更新計画時の留意点は何ですか?

主な留意点は次の通りです。

①フロント事務所・防災センター等では機器・机のレイアウトにマッチした照明設備の位置を検討する。
②厨房内等では各作業単位での必要照度の確保
③照明回路の細分化による小範囲での点灯
④LED照明器具やHF蛍光灯器具など省エネ器具の採用
⑤人感センサー、タイマー制御、調光スイッチの導入検討

事務所内の照明負荷の削減について何かありますか?

事務所内では壁のスイッチで使っていない場所も点灯し、照明が無駄になっている箇所があります。
照明器具は1つ1つの消費電力は大きくありませんが、数が多く、夜間だけでなく昼間から点灯している事が多い器具です。プルスイッチを取り付ける事で、こまめな消灯が可能となり、少ない費用で有効なエコ対策となります。
また、天井照明のあかるさを抑え、手元をデスクライトであかるくする「タスクアンビエント照明」の手法を採用することも電力削減につながります。

受変電設備の省エネについて教えてください。

受変電設備の省エネ対策として次の点が上げられます。

①高効率変圧器への更新
2003年に省エネ法が改正されて産業機器として変圧器が指定されました。目標基準値は21~48%の全損失削減です。トップランナー変圧器はこの目標値を達成した機器です。
旧式の変圧器は高効率変圧器(トップランナー変圧器)に比べて効率が悪く、年間の損失電力が多く、無駄なエネルギーを消費しています。現在、使用されている変圧器にトップランナー基準のマークが添付されていない場合、トップランナー変圧器への更新をお勧めします。
また、トランスの鉄心にアモルファス合金を採用し電力損失を他の現行機種に比べ 50%も削減した配電用省エネ変圧器(アモルファス変圧器)がありますが価格が標準品に比べ非常に高く1000KVA以上の大容量のトランスに適します。アモルファス変圧器と標準品の価格を比べると2倍程度の違いがあります。

 ②進相コンデンサによる力率改善
力率とは、使用電力に占める有効電力の割合をいいます。この値は100%に近いほど無駄が少なく、電力が有効に使用されていることになります。力率を改善することにより、電力損失や電圧降下が低減し、電気設備の容量も低減します。また、電気の基本料金が割引にもなります。力率を改善するためには、進相コンデンサの設置が有効で無効電力の削減や使用電力の減少に役立ちます。

誘導灯の省エネについて教えてください。

誘導灯は24時間365日つねに点灯しているので、1つ1つは小さいですが、点灯時間が長く、多数設置されているので全部を合計すると意外に電力を消費しています。最近は消防法にも適用した、LED高輝度タイプの誘導灯に交換することにより、従来の蛍光灯タイプに比べ格段に消費電力が削減されます。

ホテル・旅館に関連する認証制度などがありますか?

以下に記します。

  • エコアクション21認証
  • 登録制度
    環境省が定めた環境経営システムや環境報告に関するガイドラインにもとづく制度です。
  • エコホテルズ認証
    TUV Rheinland (テュフラインランド ドイツの技術検査協会)
  • Green Key認証
    1994年にデンマークで開始された、環境に配慮した宿泊施設の認証です。
  • GPNエコチャレンジホテル・旅館
    グリーン購入ネットワークが運営

工事費に関して融資などの制度がありませんか?

補助金制度があります。

設備の導入に当たってはどのように判断をすればいいですか?

投資回収年が5年以内ぐらいならば検討する価値があります。
投資回収年
=(新規イニシャルコスト+ランニングコスト) ÷ (既存ランニングコスト-新規ランニングコスト)

運用の見直し、改善施設改善型省エネ以外にコスト削減の方法はありますか?

まずは、自社の光熱費を分析することをお勧めします。

  • 年間の各費用(上下水道、電気、ガス、油、温泉)
  • 各月の費用
    他の月より多くかかっている月の光熱費を削減することがまずは効果的と思われます。

また、毎年前年と比較をしていくことで、漏水等の異常時の早期発見が可能になります。

  • 各保守管理契約内容の見直しをするべきです。
    ELV・自動ドア・ボイラーなどの設備のメンテナンス契約の内容と費用のたな卸し。
    業者委託項目の見直し(自社でできるものが無いか等)。
  • 定期的に保守点検などの管理をするべきと思われます。
  • 省エネを実行するためのマニュアルを作成し、ポイントを明確(数値化等)に基準化し(P)、改善実施し(D)、計測記録結果により効性を確認(C)します。また、その状態を維持するために、定期的な保守点検を実施する。

エネルギーコスト削減にはどのような方法がありますか?

エネルギーコスト削減には大きく二つの方法に分けられると思います。

①運用の見直し改善
照明の点灯時間、エリアなどの見直し(清掃時に全点灯して行っていないか等)
暖冷房の設定温度と稼働時間の見直し(季節ごとに細かく設定をする等)
冷蔵庫などの設定温度を見直す
上水道の使用状況の見直し(出しっぱなしにしていないか)

②施設改善型省エネ
機器の性能とその稼動状況の見直し(余過剰運転をしていないか等)
システムの統合(上記とも関連する)
断熱サッシや二重サッシの導入による空調負荷の軽減
窓ガラスに遮光幕・フィルム等の貼り付けによる空調負荷の軽減
屋上緑化による空調負荷の軽減
網戸の設置などによる空調機稼動の軽減
高効率機器などへの入替(ボイラー、空調機等)
インバーター機器の導入(ポンプ、ファン等)
エコキュートシステムなどの導入
温泉などの熱回収システムの導入
アモルファストランスに交換する
デマンドコントロールを導入する(ピークカット
照明をLED電球などの省エネ電球にする
自家発電機の導入による電力購入量の制御
太陽光発電、風力発電など
深夜電力利用
節水型の衛生器具を導入する
雨水・井水の利用
客室省エネスイッチ導入
換気ファンなどを使用時間ごとのエリアに系統分けをする
一室でも照明の点灯エリアを細かく分ける

※①・②についてはコストを掛けずに現状の改善なので直ぐにでも実行できます。

省エネに関する法律はありますか?

「エネルギーの使用の合理化に関する法律」というものがあります。

通信機器は落雷の影響を受けやすいと聞きますが、何か対策はありますか。

落雷が発生した場合、瞬間的に雷サージ(過電圧)が引込み線や弱電信号線に発生し、パソコンや通信機器などの精密機械に侵入し、多大な被害を受けることが予測されます。
対策として事務所やフロントなどの通信機器の多い場所には分電盤や端子盤内に避雷器(アレスタ)を設置します。避雷器は電源系統に雷などによる異常電圧が加わると異常電流を大地に通して放電させ電源回路を保護します。
ただし、避雷器を設置したからといって完全に電源回路が保護されるわけではありません。落雷は自然現象であり、落雷の場所等により保護できない場合がありますので設置に際し注意が必要です。

HACCPについて電気設備としてはどのような要件がありますか。

電気設備の中で主な要件としては照明設備があげられます。特に下記の点に注意しなければなりません。

①適正な照度が確保されていること。
②食品がむきだしになる作業区域の照明器具には、電球等の破損による飛散を防止する保護装置が設けられていること。
③食品の色調が変わらない光源を使用すること。

非常放送設備の消防法改正について教えてください。

平成6年に消防法が改正されました。以前はサイレン音により、必要以上に緊張感をあおり、パニックに陥る場合が多々ありました。現在は、非常放送設備を導入することにより音声による警報を発することが出来き、自火報の地区ベルを省略することができます。

既存の改修工事等で、新しく非常放送設備を入れ替える場合は地区ベルを完全に撤去しない方法もあります。数秒間ベルが鳴り、その後音声警報に切替えるという方法です。

また、スピーカーの設置基準、規格が見直されました。平成6年以前に非常放送設備を設置した建物については現行法規に適合するよう努めなければなりません。

温泉汲み上げ施設に対する消防法の改正について教えてください。

平成19年6月 東京都渋谷区温泉汲み上げ施設爆発火災事故に伴い、平成20年10月に消防法が改正され屋内に温泉採取設備が設置されている建築物等にはガス漏れ火災警報設備の設置が義務づけられました。その内容として、防災センター等において、ガスの濃度を指示するための装置を設置するなどがあります。

騒音の大きい場所で非常放送が聞きとりにくいことはないですか。

カラオケ室等音響が聞き取りにくい場所においては、非常放送と連動してカラオケ機器の電源を遮断するカットリレーを設置します。そのため非常放送スピーカーからの音声を聞きとることができるようになります。

感知器の廃棄処分について注意する点はありますか?

イオン化式感知器は、煙検出用として放射性物質であるアメリシウム241を使用しています。昭和40年代頃に製造され、現在では製造されていませんが、当時のものがそのまま残っている例が多くあります。「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(平成17年6月1日施行)」によりイオン化式感知器は法律に基づいた処分が必要となりますので既設のイオン化式感知器が不用になった場合は、製造会社に返却するか、感知器の製造会社がない場合などについては、日本アイソトープ協会に引き渡す必要があります。適正に廃棄しない場合は50万円以下の罰金となります。

「型式失効」となった自火報受信機や感知器は、いつ交換したらいいですか?

型式失効機器の取替、交換は、十分に維持管理されて性能が有効であれば、ある一定の猶予期間(特例期間)があり、それまでに取替が必要となります。機器の種類によって、特例期間の終了日はそれぞれ異なっていますので機器メーカーに問い合わせて確認しておく必要があります。また、延べ床面積の1/2、又は1000㎡を超える増改築の工事を行う場合は、現行の基準に合わせて機器を更新する必要があります。

施設の管理を行うのによい方法がありますか?

まずは、台帳を作成し管理するとわかりやすいと思われます。増改築工事を繰り返している建物の場合、竣工図面がいくつもに分かれてしまうため、特に効果があると思います。防水や設備機器などの更新時期などもわかり、修繕費用など計画的に組めるようになります。

施設に対して、法規上のリスクがありますか?

建物に対しての法律として建築基準法、消防法、バリアフリー法(略)、省エネ法(略)等があります。優良施設として所持しておくには現行法に適合をさせておくべきかと思います。

各法律は必要に応じて改正をしています。たとえば、建築基準法については、改正法以前の建物については現行法に適合していない場合「既存不適格」扱い(違法ではない)となります。ただ基本的には現行法に適合させるための努力が必要になります。現在までの主な改正法を以下に記します。

  • 構造・・・新耐震設計法(昭和56年6月)
  • ELV・・・建築基準法 第112条第9項 建築基準法の改正により、各乗り場の扉に遮炎・遮煙の機能が必要である。
  • 防火・防炎・・・建築基準法 第112条(H17年施行) 閉鎖又は作動をするに際して、周囲の人の安全確保のため危害防止措置が必要。
  • 内装仕上・・・建築基準法 第28条の2(H15年施行) 法改正により、居室内における化学物質の発散に対する衛生上の措置が不適格である。
  • バリアフリー・・・バリアフリー法
  • 機械設備・・・  省エネ法  第の改正 指定工場等には年1%のエネルギー削減努力義務が課せられた。
  • 放送設備・・・  消防法

事務室に表示するべき警報の種類は何がありますか?

警報関係は、事務室内で確認が容易にできる位置にするべきです。

  • 火報、排煙、煙感連動ドア、シャッター等の防災盤
  • 機器等の警報盤
  • エレベーターのインターホン
  • 監視カメラのモニター
  • 館内放送
  • サウナ、トイレ等の警報

外装へのサビの付着について

外装にサビのような汚れがある場合、その部分の落下の可能性がある

外壁、軒先、軒天井にサビのシミのようなものが見える場合、その部分に水が廻り、下地材を腐食させ、部材等の強度がなくなり、落下する可能性があります。 (図1)

ヒントとサンプル

①建物の持主は、日頃から、外装(外壁、軒先、軒天井)の目視による点検を心がけ、もし上記のような、兆候を発見したら、早急に、解体をともなう調査のうえ、改修計画をたてるのが、望ましいです。

図1

施設を長持ちさせるために注意するべきことは何ですか?

特に外部に関して以下に記します。

  • 屋上防水はコンクリート押さえとする。
  • 屋上のパラペットにはアルミ製の笠木を設置する。
  • 階段やバルコニーの手すりはRC製かアルミ製とする。鉄製であれば溶融亜鉛メッキ製にする。
  • 外壁には庇をつける。
  • 建具はアルミ製とする。(スチール製は避ける。)

多雪、凍結地域での注意事項はどのようなことがありますか?

出入り口部分の上部は雪止めの設置、ツララ対策用ヒーター設置の検討が必要となります。
駐車場~玄関までの融雪の有無、範囲の検討も必要です。
基本的に軒樋は雪で壊れる可能性が高いので設置しない。
外部水栓は凍結対策を施します。
屋外階段には防雪のため屋根が必要です。又、落雪部分には設備機器を設置しないこと。

姿見鏡のライティングテクニック

鏡に映る顔や姿を、きれいに照らすライティング

顔の正面を照らす計画をしないと、天井からの光で顔に影ができてしまいます。
ダウンライトの場合、特に注意が必要です。 

ヒントとサンプル

①鏡の裏に間接照明を仕込むと良いでしょう。(図1~図3)
②照明を顔が正対する位置に設けた例です。(図4)
③拡散型ダウンライトを使用する方法もあります。

図1
図2
図3
図4

省エネ診断とは何ですか?

弊社では今まで設備投資をお手伝いした全国のホテル・旅館の光熱費調査を毎年実施しており、一人当たり光熱費や面積当たり光熱費のデータを算出し、それを基に各施設で省エネ検討が出来るような情報を顧客に提供しています。
そのデータベースと比較する形で対象旅館の光熱費分析を行い、光熱費の削減余地を推定しながら省エネの検討を行い設備投資に反映させます。

客室テラスのサービスルート確保

隣り合う客室テラスで、効率的に清掃を行える仕組み

客室のテラス・露天風呂の清掃は、通常1室ごとに行うため、時間がかかってしまいます。

ヒントとサンプル

①客室外部テラスを連続して清掃が行えるよう、界壁にサービス用の低い扉を設けて、作業時間の短縮化を図りました。(図1~2)
②扉の高さは1300とし、普段は扉として目立たないように、デザインを工夫しました。施錠も必要です。(図1~2)

図1
図2